2019.05.06

Chap.10 現場合わせの作業-渋沢教会堂②

住宅建築と大工の仕事

(渋沢教会建築工事。前回からの続きです)

 

聞き手
前回は、国産杉の集成材の製作エピソードをお伺いしました。他に苦労された工事はご記憶にありますか。

 

 

親方
はい。建築工事には現場合わせ、つまり設計図面には敢えて詳しく描かず、現場で調整しながら寸法を合わせる作業があるんですね。住宅でも当然あるんですが、詳細をきっちりと描きこんでしまうと、3次元で作っている時に小さなところで辻褄が合わなくなることがある。だから最後には大工の裁量で完成させる「遊び」が、図面には必要なんですね。

 

 

 

上の写真で、トユの位置を見て欲しいのですが、大きな屋根と小さな屋根のトユが一直線になっています。これが意外と困難な作業なんですね。

 

 

聞き手
トユを見てこれが大変な工事なんだなと思う人は先ずいないと思いますが。

 

 

親方
そう思います。考える手順としては、大きな屋根のトユに小さな屋根のトユを合わせるのですが、その小さなトユの高さをピタリと決めるためには、小さな屋根を構成する材料の加工寸法を微妙に変えて解決しないといけないんですね。

 

 

聞き手
トユが雨水をきちんと受けるためには屋根勾配や屋根板金も絡むでしょう。それらにも配慮して現場で決めながら作業を進めるんですね。

 

 

高さ方向を表現した矩計図。トユの高さが書き込まれているが、最終、現場合わせとなる

 

親方
トユが一本水平にスカッと決まるかどうかは、この建物の外観イメージが大きく変わるからね。

 

 

聞き手
建築工事の意匠は、建築士と大工との二人三脚で進めるんですね。

 

 

(次回は、この特殊建築物の上棟作業のお話です。こちらからジャンプします

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