2019.07.16

「サンサポートオカヤマ」-SNSを駆使した救難物資の調達システム(2)

子供の生きる力を育む[場]作りの達人たち

皆様、こんにちは。

 

 

今回は「サンサポートオカヤマ」代表、ボウズ満恵さんにお話を伺います。(前回の記事はこちら)

 

 

サンサポートオカヤマ代表 ボウズ満恵さん

 

 

サンサポートオカヤマとは?

2018年7月の西日本豪雨後、岡山県内各地で被災された子育て中のママたちの困りごとを、できるだけ早くサポートするために立ち上がった、ママたちによる団体です。現在は、被災地のママと子どもと支援者をつなぐ活動を続けていらっしゃいます。

 

 

 

最初は不安だらけだった子育て。

 

ライター:「ボウズさん、それではよろしくお願いいたします。早速ですが、ボウズさんは2児のママでいらっしゃるのですよね。」

 

 

 

ボウズさん:「はい、小学4年生と6年生の2人の子どもがいます。結婚後はパートで仕事を続けていましたが、不妊治療を機に仕事を辞め、しばらくは専業主婦でした。第一子を出産後、しばらくして仕事を再開しましたが、子育てと仕事の両立がなかなかうまくいかず、あわただしい日々だったのを覚えています。

 

 

 

今は、地域とのつながりをとても大切に思っていますが、もともと、今住んでいる場所にご縁があったわけではないです。ご近所に親しい方もいなかったですし。だから、地域の子育ての情報もどこで手に入れることができるのかわかりませんでした。

 

 

 

それで、ママ友を作ろうと親子クラブに参加したのですが、加入した親子クラブでは、みんなで工作をして楽しむことが多々あって。0歳児にはハードルが高く、疲れ果てて帰る毎日が続きました。

 

 

 

二人目が生まれて保育園に預けるまではママ友はできなかったです。そんな時期がありましたので、地域とのつながりやママ友とのつながりの大切さというのも、本当に強く思っています。」

 

 

 

ライター「私も、結婚後元々地縁のない場所で暮らすようになり、子どもが授かってから、ママ友を作りたくて奮闘しました。それがあったからこそ、地域やママ友とのつながりが、母子とも大切だってヒシヒシと感じました。

 

 

 

ただ、何か地域のために行動したいと思っても、お子さんが小学生でしたら、まだまだ何かと制約がある、と申しますか、自分で制約を作ってしまいがちですよね。」

 

 

 

できることから始めた被災地支援

 

ボウズさん:「はい。西日本豪雨があった時でも、私と同じようなママたちがたくさん辛い思いをしていることを知るにつけて、居ても立っても居られなかったのですが、やはり我が子のこともありますし、現地へ駆けつけることができませんでした。」

 

 

 

ライター「被災後は、そういうジレンマや無力感に陥るママたちが増えたと思います。私もそうでした。でも、ボウズさんは、ジレンマや無力感に陥る間もなく行動に移されましたね。」

 

 

 

ボウズさん「友達や子ども関連の付き合いでの連絡手段として、いつもLINEを利用していたのですが、西日本豪雨後、私のLINEに、真備で避難所に移ったママたちの困り感が届くようになりました。そこで、LINEを利用して、被災地のリアルな困り感をもらい、それを解消する“架け橋役”なら、無理なく自宅でもできるって思ったので。」

 

 

 

ライター「なるほど。私も「子どもがいるから現地に行けない。だからせめてもの、何か支援物資でも送りたい!」という気持ちにはなったのですが、「支援物資がちゃんと届いていない」とか「余剰品で逆に迷惑になっている」などの報道で、気持ちが萎えてしまい、何をしていいのか余計わからなくなりました。」

 

 

 

ボウズさん「『なんとかしてあげたい』という思いは、誰もが持っているもの。ただ、『必要なものを必要な人に届けてあげるシステムが必要』と痛感し、何か応援したいけど何をしたらいいのかわからず自己嫌悪や無力感に襲われているママたちのために、先ずLINEアカウントを作成し、SNSを通じて物資のマッチングをすることにしました。

 

 

支援物資を届けるメンバーたち

 

 

 

避難所の声を吸い上げてダイレクトに物資を調達。

 

例えば、避難所生活で再発してしまった子どもの喘息用吸入器、避難所でも使いやすい洗濯物干しグッズ、靴など誰のものか区別がつきづらい状況なので名前を書くための油性マジック、環境が変わったことにより体調不良になりやすいので体温計といった具合です。避難所からのダイレクトの声を吸い上げると、思わぬ需要がたくさんあることが分かりました。これらは全て、行政には頼みづらいもの、配給には入っていないもの、個人では買いにくいものでしたので、お役に立てられたと思います。」

 

 

 

ライター「私たちは避難訓練をしたことはあっても、避難所訓練をしたことがなく、避難所で“日々を過ごす”となると、必要なものが急場しのぎでは対応しきれないでしょうし、想像の範囲を超えているかもしれない。だからこそ、現地のリアルな要望に応えられるシステムは、被災者の皆さんにとって、とても大きな支えになったでしょうね。」

 

 

 

ボウズさん「ママたちは常日頃からネットワーク作りをしていて、非常時にはこれが遺憾無く発揮されます。子どもや高齢者も含む多くの困りごとを解消するハブとして、ママたちが活躍されていたのです。そして、情報難民に陥りやすい世代である高齢者の代わりになって、要望を発信してくれました。普段、地域生活でお世話になっている高齢者世代に対し、ママたちが恩返しできるチャンスにもなりました。」

 

 

 

ライター「子育て世代って、町内会の集まりなどになかなか参加できていない世代だと思いますが、子どもたちにとっても“地域とつながっている”ということは、とても大切ですね。」

 

 

 

ボウズさん「子育て中のママたちは“地域社会の真ん中にいる存在”だということを、もっと意識してもらいたいです。平時は、仕事や育児などで忙しく、地域活動やましては防災訓練をする機会を創出することが難しいママたちですが、この層の意識が上がると地域力が上がることを痛感しています。」

 

 

 

子育てママのネットワークを広げ続けること。

 

ボウズさん「今後必ずあるであろう自然災害時に、子どもたちを守り抜くために、また子どもたちの生き抜く力を培うためにも、子育て世代への啓蒙活動が必要だと感じています。“子育て世代の意識改革が地域を救うことにも繋がる”ことがアピールできるよう、忙しいママたちが勉強会や交流会に行きたくなる”キーワード”も必要ではないか、と思っています。」

 

 

 

被災地支援セミナーで話すボウズ満恵さん

 

 

 

ライター「そうですね。ママたちは、どうしても日常に忙殺されがちで、地域の勉強会や交流会に縁遠くなってしまいがちですが、それでも行きたくなる仕掛けが必要ですね。ところで、支援のカタチは時間が経つことにより変化してくると思いますが、いかがでしたか?」

 

 

 

ボウズさん「発災から8カ月経った頃、支援はモノからコトへ比重が代わりつつありました。そこで、幼稚園単位の茶話会を企画し、『今どこで何しているんだろう』など、聞きづらかったことが聞ける場を創りました。

 

 

 

「災害支援ネットワークおかやま」で知り合った他の団体と連携してイベントを開催したり、ホッと落ち着く場所としてのコミュニティスペースをオープンしたりしました。必要物資は時間変わります。震災から8か月後の今でも、必要物資を数まで把握し、SNSで募っています。3月には、新学期応援プロジェクトとして「真っ白スニーカープロジェクト」や「ハンドメイドプロジェクト」を実施し、たくさんの方の善意も届けることもできました。」

 

 

新学期前に新しい通学靴をプレゼント

 

 

ライター「今取り組まれている『ハレハハプロジェクト』のこととトリアージ色のファイルについて教えてください。」

 

 

 

ボウズさん「現在取り組んでいるプロジェクト『ハレハハプロジェクト』は、“晴れの国岡山”のお母さんたちと一緒に取り組んでいるので『ハレ(晴れ)ハハ(母)』というネーミングにしました。被災地となった真備のお母さんと話をする中で、『被災して本当にたくさんの方に助けてもらってきた。今度は、私たちも何か役に立てることをしたい・・・』という声から生まれたプロジェクトです。

 

 

 

私は災害支援活動を行う中で、何か先に残せる活動を行いたい、そして、災害はとても悲しい出来事だったけど、未来につながる明るい要素となるものを、被災地のお母さんたちと作りたい、と思うようになりました。災害時に役に立つものなどがいいな、と思う中で『ハレハハ』がたどり着いたのが、“トリアージ”を使ったファイルです。

 

 

 

※トレアージ”とは、
救急事故現場などにおいて患者の重症度に基づいて、治療の優先度を決定して選別を行うこと。日本では阪神淡路大震災以降知られるようになる。避難所トリアージ、院内トリアージ、という概念も生まれた。救助する側の意思疎通・情報共有のために4つに色分けされた“トリアージタッグ”が使用される。

 

 

 

ファイルポケットを色分けすることで、プリントや宿題、お便りなどを重要度別に分別し可視化でき、重要度や優先順位を自分で考え判断する訓練の場、育ちに配慮が必要な子どもへのサポート、自己管理ツールの1つとしても役立ててもらいたい。そして、本来災害現場などで使用されるトリアージの意味を浸透させることができ、防災教育につながげてもらいたい……。

 

 

 

今、商品化を目指して制作も最終段階に来ています。これを来春1年生になる真備のお子さんにプレゼントができるよう、頑張っています。」詳しくはこちらをご覧ください。」

 

 

クラウドファンディング挑戦中!!


※画像:OHK岡山放送6月20日OAニュース

 

 

 

ライター「災害という出来事をプラスにつなげ子どもたちの未来に活かしたい!という素晴らしい取り組みですね。被災地から離れていると、どうしても困り感を共感できる機会が薄れがちな中、ずっと情報を受信し発信されているボウズさん。今日はありがとうございました。」

 

 

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