2019.08.13

Chap.17 壁体内結露はお天道様次第-住宅の気密断熱を考える②

住宅建築と大工の仕事

(前回からの続きです)

 

 

聞き手

親方、壁の中の木材が劣化する環境を避ける事。この大切さを、前回お聞きしました。そこで今回は、その具体的な方法をお聞きしたいと思います。

 

 

 

親方

はい。よろしくお願いします。その前に、「高気密高断熱住宅には絶対は無い」ということは、お断りしておかなければいけません。

 

 

 

100%完璧にはできないということでしょうか。

 

 

 

親方

そうですね。空気中の水分をコントロールすることは不可能だからです。断熱材は水分を吸うと一気に性能が落ちる。だから長期にわたり、高断熱の性能を保ち続ける事はほぼ不可能。だから、完璧では無いということですね。

 

 

 

最近の住宅では通気層を設けてそこから湿気を排出することで解決しています。

 

 

 

親方

はい。現在の木造住宅における湿気対策のスタンダードは通気層による湿気排出です。

 

 

 

外壁工事の写真。縦方向の細い材木同士のスキマを空気が下から上に通る。これを通気層と呼びます。

 

 

 

親方

壁の中はどうしても水分が侵入します。完璧に遮断する方法は無いと言っていいでしょうね。どこかにわずかな隙間はどうしてもあります。外壁通気による湿気の放出とは、壁の中よりも通気層の方が湿度が低い状態になるので、湿気が移動するという現象を意識しています。

 

 

 

 

親方

上の写真の白いシートが「透湿シート」です。つまり、この透湿シートの奥の室内側から、透湿シートを通って、手前の外壁通気層へと湿気が移動して、この層から湿気を排出するというメカニズムです。

 

 

 

ということは、通気層は常に壁の中よりも湿度が低い状態であるべき、言い換えれば、そうあって欲しいという前提ありきの議論なんでしょうね。

 

 

 

親方

そうですね。理論上、木材腐朽菌の発生条件は、湿度では85%以上ですから、通気層が湿度85%以上の状態が続くと不安になりますね。

 

 

 

雨の日で外気の湿度は85%前後になりますね。梅雨の頃は、外壁通気層の湿気排出効果はあまりないでしょうね。ただし、年中、85%以上となることはあり得ませんから、外気の湿度が下がった時に、じわじわと壁の中の水分を通気層を通じて排出すると言った方が正しいでしょうね。

 

 

 

ここまで説明する方は、ほとんどいないと思います。でも、通気層が湿気を排出するからご心配ありませんと言い切るよりは、親切だとは思いますけどね。

 

 

 

なるほど。ということは、1年を通じて何日かは、壁の中に結露する日もあるけど、晴れの日にその水分が放出されるから大丈夫だ。という前提なんですね。

 

 

 

親方

はい。だから完璧ではないんです。結局、高性能をアピールしていても、最終的にはお天道様頼みなんですね。実際、屋外の気温や気圧の違いで、通気層の流れが変わっていることを、大学の研究機関がデータとして取っています。それによれば、上昇気流を想定しているのに、下降気流が発生する条件も観測されています。ご関心ある方は、当社の担当者におっしゃっていただければ、その論文をご覧いただけます。

 

 

 

 

通気層を通じて、湿気が排出されるというメカニズムが、希望的観測を前提にしている気がします。それでは消費者としては、何に着目すれば良いのでしょうか。

 

 

 

親方

はい。現在の断熱材の施工方法では、通気層確保がベストな選択肢なので、それは了承いただいたうえで、通気層がしっかりと機能しているかどうか、それをチェックすべきでしょうね。

 

 

 

次回は、通気層の施工上の大切な点をご説明します。更に、高気密高断熱を追求し続ける事の是非をお伝えしたいと思います。

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