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住宅建築と大工の仕事

Chap.16 「断熱」と「材木の腐朽」は表裏一体-住宅の気密断熱を考える①

2019.08.03

高気密高断熱住宅。次世代省エネ基準。ZEH住宅。住宅業界各社は、気密と断熱の性能にしのぎを削っています。建材メーカーの開発競争も激しく、毎年様々な商品が発売されています。一方で、皆様お気づきのとおり、気密と断熱の性能を追求することによる弊害があるのも事実。

 

 

 

そこで今回から、大工の視点から解説する住宅の気密と断熱についての話題をお送りします。単に、数字で示される気密と断熱の基準に拘るのではなく、そこから一歩距離を置き、住宅という器そのものに必要とされる「総合的な性能」について、お考えいただくための、一つのきっかけになれば幸いです。

 

 

 

聞き手

それでは親方、今回は気密と断熱についてのお考えをお聞きしたいと思います。

 

 

 

親方

はい。よろしくお願いします。

 

 

 

親方が若い頃、気密と断熱について熱心に研究されたと、以前お伺いました。

 

 

 

親方

はい。そうなんです。独立し請負でやっていこうと会社を設立してから、技術でお客様にお役に立てることはないだろうかと考えました。いろいろ考えたあげく、当時黎明期だった高気密高断熱住宅の開発に取り組んでみようと、思い立ったんです。

 

 

 

住宅産業が成熟し、量から質の向上へと軸足を変えつつあった時代に、断熱住宅のブームが一気に広がったようですね。

 

 

 

親方

はい。当時の住宅は寒かったからね。断熱材さえ入っていなかった家もあるし、入っていたとしても杜撰な施工が多くて、性能を発揮できていない住宅も多いと思いますよ。

 

 

 

そのような背景があって、親方ご自身で研究をスタートされたんですね。

 

 

 

親方

そうなんです。当時とても性能が優れた、トステムのスーパーウォールというのがありました。その出来栄えには驚かされました。同時に、値段にも驚かされました(笑)。だから、限られた人たちだけのためではなく、一般の多くの皆様のために、よりリーズナブルにできないかと考えたわけです。

 

 

 

断熱性能の確保と木材の耐久性を両立すること

 

 

高気密高断熱住宅を考えるにあたり、大切なことを教えていただけますか。

 

 

 

親方

はい。やはり湿気対策でしょうね。温暖湿潤な気候の日本では、これは避けて通れません。高気密高断熱住宅は、材木を包み込んでしまうため、湿気が滞留してしまう。この対策を怠ったために、壁の中や床下が、新築直後にカビだらけになったという話は、当時全国至る所で聞かれましたね。

 

 

 

床下を覗いたら、床下一面に、カビがびっしりと隙間なく生えていて、所々にキノコも生えていたという話を、聞いたことがあります。

 

 

 

親方

はい。高断熱にした結果、カビが生えやすい条件を作ってしまったんですね。湿気対策を怠った分かりやすい例ですね。カビが生えるという事は、木材腐朽菌についても対策をされていなかったとも言える。

 

 

 

木材腐朽菌とは、木材が劣化する原因菌ですね。

 

 

 

親方

はいそうですね。木材が劣化して腐っていくのは、木材腐朽菌が原因であって、水ではありません。東京の江東区の海沿いに「木場」という地名があります。江戸時代に、材木商人がこのあたりで材木を水に浸けて貯蔵していたことが、地名の由来なんですが、昔から、木材を保存するときは水に浸けておく方法を取っていたんです。このように、水そのものは木材を腐らせません。

 

 

 

なるほど。

 

 

 

親方

だから住宅でも、この菌が繁殖できない条件を保てば、長持ちするわけです。寺社仏閣には、雨ざらしの状態の木材がたくさんあるけど、劣化していない。菌が繁殖できる条件ではないからなんですね。

 

 

 

(注釈) 木材腐朽菌の繁殖条件は、湿度85%以上、木材含水率が20%以上、温度は20から30℃。

 

 

 

ということは、住宅を構成する全ての木材が、常に菌が繁殖できない状態に保つことが求められますね。

 

 

 

親方

はい。これが高気密高断熱住宅の、開発の全てと言ってもいいでしょうね。断熱を追求した結果、柱などの壁の内部の木材が腐ってしまい、耐震性能が一気に落ちる。そんな本末転倒なことになりかねませんからね。

 

 

 

近視眼的に、高気密高断熱を追求することには、大切なものを見失う懸念がありそうです。

 

 

 

親方

はい。ただ、ご安心ください。今では基本的な対策は、ほとんどの会社でできていますし、それだけの知識は普及しています。ただし、細かいところまで目が行き届いているかどうかは、会社ごとに差があるでしょうね。結果的に、建物の寿命も確実に差が出ますね。

 

 

 

親方

あと、断熱材が何が良いかなど検討しても、それぞれの商品で一長一短です。性能を示す数字が、イコール住宅の断熱性能とは限らない。それよりも断熱材周りの施工方法の方が大切でしょうね。

 

 

 

次回は、実際の施工についてのお話です。