2018.11.10

私たちがつくっているのは、未来のアンティークなのです。

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住宅の耐用年数を考えるときにいつも話題に上がるのが、日本とイギリスとの比較論。

 

日本の解体された住宅の築年数の平均が30年に対し、イギリスはその2.5倍の77年。(2006年国交省「滅失住宅の平均築後経過年数の国際比較」より)解体の理由は様々でしょうが、長く住むには値しないという判断が、解体へと導いたことは否定できません。

 

日本では、木造住宅を長持ちさせる技術は既に習得できています。寺社仏閣は当然のこと、民間人の邸宅でも築100年以上の立派な木造家屋は全国に残っています。温暖湿潤な気候の中、湿気や害虫による素材の劣化を防ぐ工法が研究され続けたからです。

 

開成町にある築300年の瀬戸屋敷。

 

「始末する」という言葉があります。片付けるという意味で今は使われていますが、本来は「命ある物、使える間は使う」という意味です。住宅で使われる木材。樹齢100年の材ならば、少なくとも100年は住宅建材としての第二の人生を全うさせてあげたい。本来、日本人にはそのような心がありました。それなのに、日英の比較文化論を通じて自らを反省するという有様。そろそろ真剣に見直してもいいのではないでしょうか?

 

 

イギリス人が親から子・孫へと代々継いでいくのは、住まいだけではなく、家具・調度品、衣類や小物までもと言われています。アクアスキュータムのトレンチコートや、グローブ・トロッターのトラベルケースを親から継ぐのは一般的の様ですね。キズも味わうものでそれらの変化(つまり、エイジング)を楽しむことが、モノへの愛着を生むことになるのでしょう。

 

 

住まいに目を移すと、親から継ぐのではなく他人から引き継ぐ、つまり使い古された中古物件の購入もイギリスでは一般化されており、築100年の物件でも建物の値段がつく様です。日本では20年超えると住宅の価値がゼロになると言われますので、これはもう全く話になりませんね。

 

 

イギリス礼賛はこれくらいにして、私たちの身の回りを見渡してみましょう。年月の経過とともに味わい深く風合いが増して、大切に使われているものがあるはずです。家具・革製品、帆布のカバンなどがすぐに思い浮かびます。本当は私たち日本人にも、使い込まれて味わい深いモノに、価値を見出す心があるのです。だから、そろそろ住宅にも「始末をする」という価値観を持ちませんか?

 

 

国境を越え、長く大切にされるものの共通点があります。

 

 

それは職人のこだわりと素材。世界中それがあてはまります。経済合理性ありきの製造の領域と対極の世界ですが、どちらが本当に経済的なのかについては再考の余地はありそうです。大切に住み継がれた築100年、200年の古民家があります。その間、もし30年ごとに新築を繰り返していたとすれば、住まいへの出費の総計の差額は、圧倒的ですね。

 

アイ.創建が小田原で建てたお住まいには、京都の古民家で使われていた梁の古材を再利用した(天井のこげ茶色の材)。築5年で床のナラ材の風合いも増している。

 

 

無添加住宅をつくる、私たち(株)アイ.創建は「100年先の古民家づくり」が理想だと思います。未来のアンティークを今考えるべきであると。それを実現するために、本物の素材選びと職人の技、そして日本の生活文化を見つめなおすことを、常に忘れないで仕事をしたいと考えています。

 

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