皆様こんにちは。
「田んぼの学校」(*1)をご存知でしょうか?
これは、古くから農業の営みの中で形づくられてきた水田や水路、ため池、里山などを、遊びと学びの場として活用する環境教育の総称で、平成10年度に国土庁、文部省(いずれも名称は当時)、農林水産省の3省庁が提唱したものです。
田んぼから学ぶということ。
確かに、田んぼのある家の子たちはたくましい。我が家の周りは田んぼや畑ばかりですので、家族ぐるみでお米やお野菜を栽培している方が多いのですが、お家の農業手伝いをしている子どもたちは、心身ともに気骨がある。何事にも体験に基づいていますので、まさに「地に足がついた」輝きを放っているように感じられます。
ここ最近、学校園も地域と連携して農業体験活動を促進していますが、18歳の長男が小学生だった頃の田植え体験は、バケツ稲作でした。せっかく学校の周りが田んぼけなのに、どうしてバケツ稲作?
広い田んぼで田植え体験できたら、どんなにか楽しいだろうなぁ…。ぬめぬめとしほんのりやわらかい泥の感触を味わいながら、お日さまの温かさや涼やかな風を感じながら、いろんな虫や生き物に触れながら、田植えをすると、自然のつながりや恵みが肌で感じられるんだろうな…。
そういう体験をさせたくて、「学校の授業で田植え体験ができたらいいな~」と、つぶやいてみたこともあります。が当時は、「誰が田んぼを提供するの?」 「子どもがケガをしたらどうするの?」 「裸足で手植えをさせるためにどれだけ下準備が要ると思っているの?」などなど、願望を言っただけで、いろいろ非難をいただきました。
それでも田んぼがある家っていいなと憧れが募っているとき、町内にも「親子田んぼと食べるもん学校」があることを知り、親子で入学しました。10年以上も前の話です。
麦踏み体験。
途中入会だったため初参加が1月。初めての授業は「麦踏み」。お米と違って、麦は秋に種をまくのですが、とても寒い冬の日、集合場所の畑に行ってみますと、3センチほど育ったか弱い雑草のような麦の苗が育っていました。
田んぼの先生が、「少し育った茎を踏んでやると、たくましく育ちますから、みんなで踏んでいきましょう」と、仰るのですが、(せっかく芽が出たばかりなのにかわいそう~)と、私は踏むのを躊躇してしまいました。
しかし子どもたちは、無邪気に広く乾いた田んぼの中を走り回り、何度も麦を踏んでは大はしゃぎ。「ちょっと、踏みすぎなんじゃない。先生、大丈夫ですか?」って思わず聞いてしまうほど。
でも、「麦は踏めば踏むほどたくましく育つから、心配いりませんよ」と言ってもらい、ホッとしつつも、とてもびっくりしました。麦踏みの知識はそれまで全くなかったのですが、(なんだか子育てに通じるものがあるな~)と妙に腑に落ちたたことをよく覚えています。
「この畑の麦は、みんながたくさん踏んでくれたから丈夫に育つよ。そして初夏に麦刈りしておいしいうどんになるから、みんな楽しみにしていてね」って先生が仰いました。
ちなみに「麦秋(ばくしゅう)」とは、麦の穂が実り収穫期を迎えた初夏の頃を指します。それからは、自然と、空の様子や天候などを気にするようになっていました。
うどん屋のご主人が農業を通じた子育てに取り組む。
親というものは、子どもの「食育」に関してあれこれ思い、いろいろしてみるけど、「体験活動」は、親だけではなかなかハードルが高過ぎます。だから全国各地で自治体や企業、地域有志らが農業体験授業を開催され、どこも好評を得ています。
次回から、我が家も入学していた「親子田んぼと食べるもん学校」の校長先生・大倉秀千代さんをご紹介します。
大倉さんの本業はうどん屋さん。自分で小麦を育て、自分の石臼で小麦を挽き、自分でうどんにする。そんな貴重なうどんがセルフ形式でいただける人気店「一文字うどん」の社長です。
地元の園児らが食育活動の一環として見学に来ることもあります。
実は、大倉さんは町内ご出身ですが、大学進学時に上京、そのまま東京で就職。そこで結婚もし、お子さんも授かりました。そんな都会暮らしをされていた大倉さんが、どうして地元に戻りうどん屋さんになったのか。そして、どうして「親子田んぼと食べるもん学校」の校長先生になられたのか。
次回、大倉さんのインタビューをご紹介したいと思います。
(*1)「田んぼの学校」は一般社団法人「地域環境資源センターの登録商標」です。