日本一のだがし売場/秋山秀行さんインタビュー
皆様こんにちは。
それでは今回はいよいよ日本一のだがし売り場を主催されている(株)大町の秋山社長にお話を伺います。
(株)大町の秋山社長
ライター:「秋山さん、それではよろしくお願いいたします。早速ですが、仕事をしていく中で『子どもの生きる力を育みたいな』って思われるようになった「きっかけ」は?」
秋山さん:「僕はお菓子卸業の三代目なのですが、お菓子って子どもが対象でしょう。昨今の子どもの問題とか世の中の問題など見つめ直していると、解決策は小さい頃の教育しかないなって思うのです。事業でもそうなのですが、一番大切にしているのが「原点」なのです。お菓子の原点は「駄菓子」なのです。
※日本一のだがし売り場
今、農業もしていますが、農業の原点も「固定種」でしょう(秋山さんは地野菜を栽培したり、日本固定種も販売されています)。人間の教育の原点は「幼児教育」ですよね。大人になって変えようとしたって無理が多い。世の中を良くするためには、何か悪いことがあって罰を与えることを考えるよりは、根っこの部分(幼児教育)をきちんとしておけば別にそういう問題が起こらなくなるんじゃないかなって…。
子ども相手に商売をしながら27歳頃からずっと考えていたのです。50歳が過ぎ、やっと自分のやりたいことができるようになってきたから、子ども相手にあれこれしているのです。まぁ、昔から子どもが大好きでしたからね。」
ライター:「元々子どもが好きじゃないとできないことばかりされていますよね。」
秋山さん:「そうですよ。あんなチンドン屋の恰好なんて普通できないよね(笑)。僕は子どもが大好き、やんちゃな子がとくに大好きなんです。子どもは自然に近いでしょう。駆け引きがないし言葉を選ばない!」
※チンドン屋に扮して紙芝居をする秋山さん
ライター:「こっち(親として)がひやひやするくらいにね(苦笑)。」
秋山さん:「好きと言いますかおもしろいんです。だから僕は仕事で疲れた時、駄菓子売場に行くんです。子ども相手にあれこれ話していると疲れが吹っ飛ぶんです。仕事をしてるって感じじゃないんですよね。」
ライター:「子どもからパワーをもらっている、と申しますか、笑顔だけではなく、パワーの交換もされているようですね。」
秋山さん:「本当に子どもはどの子もかわいい。だからこそ、一緒に遊んで一緒に学ぶ。大事なことを教えてあげたいんです。日本人の心とか食や農業の大切さ、「もったいない」とかね。そうしたら、それは一生ついてまわるんですよ。」
ライター:「『もったいない』精神から日本一のだがし売場が生まれたのですものね。」
※だがし売り場の様子
秋山さん:「賞味期限が切れてないのに廃棄処分する今の流通ってどうかしてますよ!」
ライター:「小さい子だけではなく、ちょっと家や学校に居づらくなった子どもたちにも深く関わってあげられていますよね。」
秋山さん:「いぁや、時には万引きする子もいるんですよ。見つけたら僕は警察や学校に言う前に、もちろん親御さんには連絡しますが、とにかく話をちゃんと聴く。そうすると心根ががらっと変わるんですよ。今でもたまに、「社長~」って相談の電話とかありますよ。」
ライター:「話をちゃんと聞いてくれた、寄り添ってくれた、というのが嬉しかったのでしょう。そういう経験をした子は、後々恩送りができるのでしょね…。」
秋山さん:「味方になってくれる大人も世の中にはいる、ということをわかってもらえただけでも嬉しいね。」
ライター:「地域のお父さんのようですね。こういう場があるからいいんですよね。日本一のだがし売場なのに昔懐かしの小さな駄菓子屋さんのような要素もありますね。」
秋山さん:「町自体が子どもの笑顔があふれて、仕事も農業も盛んになったら、少子高齢化が進む田舎だって、ここは子育てをするのに最適だ、そして経済的にも成り立つ、といろんな人が集まってくれる町になるよう一企業ができたら、おもしろいでしょ。そういう成功事例を作りたいのが今の僕の夢の一つ「元氣村構想」なのです。いや、僕と言うより(株)大町の社員やパートさん、みんながこの想いを共有しています。心底が同じだから、どんなお客さんが来ても同じ対応ができるのです。」
※元氣村構想(こちらはフランス語版です)
ライター:「社員みなさんの共通理解が明確で同じ夢に向かって行動している、というところも(株)大町さんの強みですよね。」
秋山さん:「わが社は組織をやめてチームにしました。社員みんなが仕事を自分事と捉えられるようにです。チームは一人かけてもダメになりますから。そして、楽しく取り組んでもらいたい!人生一回きりしかありませんからね。もうけた損した、あいつに勝った負けたとか、比べる世界じゃなくて、もっと楽しくみんながそれぞれ一番や、みたいにしたいのです。これは仏教でいう「天上天下唯我独尊」ですね。」
ライター:「社長のチーム作りは、家庭でも同じことが言えますよね」
秋山さん:「子どもが苦手に思うことをあれこれいじくりまわさなくても、好きなことやできるとこをのばしてあげたらいいんですよ。」
ライター:「そんな風に子どもを信頼するためにも、人としての土台をまずはしっかり育ててあげてからの話ですよね。それがないのに、あれこれ言わないのはただの野放しですよね。」
秋山さん:「そうそう!根っこの部分、幼児教育をちゃんとしておけば、あとはもう本人に任せられる。」
ライター:「秋山さんはどんな子どもだったのですか?」
秋山さん:「家業が忙しくて僕は小さい頃、近所の元住職に預けられることが多かったのです。育てのおじいさんですね。」
ライター:「小さい頃から徳育の英才教育を受けていらっしゃったのですね。」
秋山さん:「それがじいさんから説法を受けたことがないのです。」
ライター:「では、日常的に自然に大切なことをさりげなく教わっていたのですね」
秋山さん:「おこった顔も見たことがなかったですしね。心にゆとりがあったのでしょね。だから、親じゃなくてもちゃんと幼児教育ができることは、僕自身が体験済みです。」
ライター:「子育てを親だけでしないといけない、となると、狭い世界の中で親もいっぱいいっぱいになりますよね。」
秋山さん:「昔は三世代とか地域で子どもを見ていて、誰かが叱っても子どもには逃げ場があったし、それが親のオアシスにもなっていた。今はそこが難しいからね…。」
ライター:「ここ(日本一のだがしやさん)は、大変な子どもたちの逃げ場としての機能も担っていると言えますね。大変な子どもたちと言えば、秋山さんはいろんな子どもたちの支援もされていますよね。」
秋山さん:
「はい。3月12日はだがしの日~笑顔とだがしの交換日~として各地をまわっていますが、子どもの笑顔を優先的に取り戻したいのが、
①貧困と虐待で苦しんでいる子ども
②障がいを持った子ども
③いきなり被災に遭った子ども。
この3者を優先しながら全国に取り組みを広げています。
昨年は3・11の次の日ということで石巻市で、だがしの日イベントを開催しました。震災があって7年も経っていましたけど、打ち合わせに伺った時、復興はまだまだ遠く、皆さんの表情も暗く感じました。震災後に生まれた子どもたちでさえそうでした。笑顔で元気に頑張るためにも何かしたかったという地元の思いと合致したことで、だがしの日イベントが開催することができました。
たくさんの子どもたちの笑顔が見られて大人たちも元気をもらえました。7年目だったからこそできたことだと思います。石巻市の行政や民間の方々と連携し、何事もスムーズに進んだということは私の力では決してなく、私は何かしら大きな存在に動かされているだけだと思います。
午前中だけでも800人以上の子どもたちと笑顔とだがしの交換ができたのですもの…。
本当に笑顔がはじけていましたね。今年は地元でも被災がありましたので、一層被災地支援に力を入れ、岡山だけではなく呉(広島)、大洲(愛媛)とも共催イベントをします。
※お菓子の神様・田道間守公
大きな災害があった日の翌日が日本のお菓子の神様を祀っている神社からもらった「だがしの日」だなんて、どう考えても、天の神さまから「お菓子で子どもたちを笑顔にしなさい」って言われているようなものでしょう。」
※3/12が、だがしの日として認定されました。
ライター:「来年はオリンピックイヤーですし、だがしの日イベントに向けて、北から西から被災地を経由しながら聖火リレーならぬ製菓リレーで上野動物園を目指し、3月12日に駄菓子の聖火台に点灯するという構想がおありとか。」
秋山さん:「だがしの製菓リレーは元オリンピック選手にもご協力いただきます。びっくりしたことに、来年の3月12日には、アテネでオリンピック聖火採火式があるのです。(だがしの日と)同じ日にするなんて、こんな偶然ありますか?僕には決められないことでしょう。「DAGASHIで世界を平和にする会」には、おかしの神さまの導きをいただいているような気がします。あ!うちは炎も駄菓子ですけどね。」
ライター:「平和の祭典オリンピックともつながるとは…。まさに『笑顔の連鎖が世界を平和にする』ですね。楽しみにしています。ありがとうございました。」